本調査の要点まとめ
*「コロナ不安」の詳細は、下記の「調査方法」に記載しています。
- テレビのニュースとインターネット記事で新型コロナウイルス感染症に関する情報を得ている人は、コロナ不安(*)が高い傾向がありました。
- ラジオ、新聞、SNS、友人や家族との会話、職場、医療機関、論文などはコロナ不安と関連はありませんでした。
- テレビ視聴とインターネット記事の閲覧の時間を短くすることで、メンタルヘルスに良い影響があるかもしれません。
自然災害やテロなど危機的な状況にあるときに、メディアとの接触時間が長いとメンタルヘルスを悪化させることが知られています。例えば、東日本大震災や9.11テロの際にも、メディア視聴時間が長いことや、SNSの使用はメンタルヘルスに悪い影響があることが報告されています(1)(2)。新型コロナウイルス感染症に関しても、特定の情報源から情報を得ることで、コロナ不安が煽られることがあるかもしれません。
第1回調査は、全国のフルタイム労働者を対象に2020年3月19日~22日に実施しました。回答者は1448人でした。調査方法や対象者の詳細はこちらのページ をご確認ください。新型コロナウイルス感染症に関する情報源として、「あなたは、新型コロナウイルス感染症についてどこから情報を得ていますか?」と尋ね、14個の選択肢(テレビのニュース、ラジオのニュース、新聞のニュース、インターネット記事、YouTube、Twitter、Facebook、その他のSNS、政府・自治体・専門機関のホームページ、家族や知人との会話、勤務先からの情報、医療機関・医療従事者からの情報、医学系論文、その他)に複数回答で「はい」「いいえ」で回答してもらいました。解析の際にはYouTube、Twitter、Facebook、その他のSNSはまとめてSNSとして解析しました。新型コロナウイルス感染症に対する不安(コロナ不安)は、「あなたは、新型コロナウイルス感染症について、不安を感じますか。それとも不安を感じませんか。」と問い、「とても不安を感じる」から「まったく不安を感じない」までの6件法で尋ねました。メディアの視聴と新型コロナウイルス感染症に対する不安の関連について、性別・年齢・婚姻状況・子供の有無・職種の影響を調整した重回帰分析で解析しました。
無職者と育休中の者を除く1420名が解析対象となりました。対象者は男性が50.4%、既婚者が51.1%でした。職種の内訳は、管理職 (8.8%)、事務職や専門職などのホワイトカラー労働者 (62.8%)、小売業の店員や製造業の工場作業者などブルーカラー労働者(28.4%)となっていました。解析対象者の詳細な基本属性はこちらの表 をご参照ください。
メディアの利用状況は下記のグラフのようになっており、テレビのニュースが最も多く利用されていました。
メディアの視聴と新型コロナウイルス感染症に対する不安の関連を検討すると、テレビのニュース(調整済み標準化β = 0.133, P = 0.0000005)とインターネット記事(調整済み標準化β = 0.113, P = 0.000031)は有意にコロナ不安の高さと関連がありました。重回帰分析の詳細な結果はこちらの図 をご参照ください。
テレビのニュースとインターネット記事で新型コロナウイルス感染症の情報を得ることはコロナ不安の高まりと関連があることがわかりました。2020年3月は、1日中テレビで報道が流れていた時期でした。また、インターネット記事はいつでも好きな時にアクセスすることができる情報源です。日本人の多くの人はこれらのメディアへの暴露頻度が自然と高まっていると考えられ、不安の高まりにつながっていると考えられました。また、映像や写真などの、視覚的なイメージが心理的なストレスやPTSD症状と関連があることも知られています。過剰なメディア情報への暴露は必要以上に不安や恐怖を高めることがあります。危機的な状況であるときに、メディアに触れる時間や情報源のメディアの種類を制限することは、心の健康のためにメリットがあるかもしれません。 ただし、今回の調査は横断調査であるため、コロナ不安が高い人でテレビニュースやインターネット記事を見る頻度が高かったという因果の逆転の可能性もあるため、解釈には注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症に関する情報をテレビのニュースとインターネット記事で得ていることは、新型コロナウイルス感染症への不安が高いことと関連があることがわかりました。新型コロナウイルス感染症に関する報道をテレビで視聴する時間が長すぎないか、無制限にネットサーフィンをして情報を得ていないか振り返り、視聴時間を制限したり、情報を手に入れるメディアの種類を一時的に制限することで、メンタルヘルスに良い効果をもたらす可能性があると考えられます。