コロナ禍で在宅勤務を経験した労働者が、リモート環境下でのハラスメント(リモハラ)を経験した割合とその内容

本調査の要点まとめ

調査の背景と目的

新型コロナウイルス感染症の流行以降、約7割(※)の企業が在宅勤務制度を実施したと言われています。リモート環境下になり、職場でのコミュニケーションの様式が変化したことで、オンラインでの発言や離れた場所での指導・指示が、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたりするなどの新しい形のハラスメントが出てくる可能性が考えられました。そこで、本調査では新型コロナウイルス感染症流行以降、一度でも在宅勤務を経験したことのある労働者を対象に、リモート環境下でのハラスメント(リモハラ)の経験を尋ねました。

(※)東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」調査
http://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1022366

調査方法

新型コロナウイルス感染症に関わる全国労働者オンライン調査(E-COCO-J)第4回調査は、全国のフルタイム労働者を対象に2020年11月6日~12日に実施しました。回答者は1172人でした。調査方法や対象者の詳細はこちらのページ をご確認ください。
「新型コロナウイルス感染症流行以降、一度でも在宅勤務を経験しましたか?」の質問に「はい」と回答した441名(37.6%)に対して、2020年4月からこれまでの間に各ハラスメント項目を経験したかどうかと、経験した場合はその頻度(「時々あった」「月に1回程度」「週に1回以上」)を尋ねました。
『リモートハラスメント』は計7項目(「 1. 就業時間中に上司から過度な監視を受けた(常にパソコンの前にいるかチェックされる、頻回に進捗報告を求める等」「2. オンライン飲み会への参加を強制された」「3. 業務時間外にメールや電話等への対応を要求された」「4. 業務上必要性のあるオンライン会議に呼ばれない、仲間外れにされる等の行為を受けた」「5. 容姿や服装、部屋の空間について言及された(「すっぴんもかわいいね」「僕好みの部屋だな」等)」「6. 業務上必要性のない1対1でのオンライン会議やオンライン飲み会に誘われた」)、『リモート環境下でのパワーハラスメント・セクシャルハラスメント』は各1項目(「7. テレワーク環境下で、パワーハラスメント(パワハラ※)を受けた※業務上必要かつ相当な範囲を超えており、労働者の就業環境が害されるような、優越的な関係を背景とした言動」「8. テレワーク環境下で、セクシュアルハラスメント(セクハラ※)を受けた※相手の意に反する性的言動」で測定しました。
各ハラスメントの項目において、「経験あり」の合計人数(n)と割合(%)、頻度別の割合(%)を集計しました。

調査の結果

新型コロナウイルス流行以降、一度でも在宅勤務を経験したと回答した解析対象者441人のうち、各質問項目において、「経験あり」と回答した人数 (n)と割合 (%)は、図1・図2の通りでした。

解説

コロナ禍で在宅勤務を経験した者のうち、リモート環境下でのハラスメントの経験は4.7 %~21.1 %と、比較的高い頻度であることがわかりました。本調査では、経験した労働者がどの程度の不快な思いをしたかについては評価できていませんが、本調査で用いた内容に関しては相手に不快感を生じさせる可能性が高く、職場では避けるべき行動であると考えられます。一般に、職場でのハラスメントは心身の健康に悪影響のある事象であり、在宅勤務者にとって『リモートハラスメント(リモハラ)』やリモート環境下でのパワハラ、セクハラは心身の健康障害や職場環境(人間関係やコミュニケーションの円滑さなど)の悪化につながる可能性があると考えられます。当研究室では、リモートハラスメントがどのような健康影響につながるかについて引き続き検討していきます。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い在宅勤務を経験した者の中には、新しいタイプのハラスメントとして、リモートハラスメント(リモハラ)やリモート環境下でのパワハラ・セクハラを経験している可能性があることがわかりました。企業や産業保健スタッフは、在宅勤務者に適切な就労環境を提供する必要があり、その際にリモート環境下で起こりやすいハラスメントの状況を定期的に聴取し、改善することが求められます。また、適切な相談窓口を設置し、周知を行うことも大切です。特に、在宅勤務を主たる労働形態としている企業では、リモート環境下でのハラスメントに特化した教育の普及、防止対策を徹底する必要があるかもしれません。