東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座とティーペック株式会社は、共同研究の成果である「EAPプロバイダーが提供しているメンタルヘルスサービス評価尺度の開発」に関する発表を、第32回日本産業ストレス学会(2024年12月13日(金)~14日(土);ウインクあいち(愛知県産業労働センター);大会長 太田充彦、後藤由紀)で行いました(抄録は以下)。
第32回日本産業ストレス学会抄録集から抜粋
[演題名]
EAPプロバイダーが提供しているメンタルヘルスサービス評価尺度の開発
[発表者、共同研究者氏名]
矢野啓明1)、阿部桂大2)、中村雅子3)、飯田真子4)、今村幸太郎5)、櫻谷あすか5)、川上憲人5)
[所属機関名]
1)ティーペック株式会社 東京EAPセンター
2)ティーペック株式会社 大阪EAPセンター
3)ティーペック株式会社 商品・マーケット部
4)東京大学 大学院医学系研究科 精神保健学分野
5)東京大学 大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座
[抄録本文]
【目的】EAPプロバイダーが提供するメンタルヘルスサービスの質を評価するための尺度を新たに開発し、信頼性・妥当性を検証することを目的とした。
【方法】メンタルヘルスサービスの評価に関する文献レビューおよび、メンタルヘルスサービスを提供しているカウンセラー(6名)へのインタビューから得た情報をもとに、13項目のメンタルヘルスサービス評価尺度(MHSRS)を新たに作成し、メンタルヘルスサービス利用者を対象とした質問紙調査により信頼性・妥当性を検証した。内的信頼性の指標としてCronbach のαを計算し、因子構造を確認するために探索的因子分析を実施した。因子数の抽出基準は固有値1以上とした。探索的因子分析の結果抽出された因子構造について、モデルの適合度を検証するため確認的因子分析を実施した。また、収束的妥当性を検証するために日本語版WHO-5精神健康状態表(WHO5)との相関係数を算出した。
【結果】2023年2月~8月にティーペック(株)が提供する電話および対面カウンセリングを利用した557名に対して携帯端末にアンケートを送信し、回答を得た70名(回答率12.6%)を分析対象とした。回答者の平均年齢は47.3歳(標準偏差=11.6)で、女性が57.1%であった。探索的因子分析の結果、第1因子の固有値が10.486、第2因子の固有値が0.631となり、1因子構造を採用した。各項目の因子負荷量は0.614~0.953、Cronbachのα=0.978であった。1因子構造を想定した確認的因子分析の結果、SRMR=0.030、TLI=0.913、CFI=0.928、RMSEA=0.147、GFI=0.746、AGFI=0.645であった。MHSRSとWHO-5との相関係数はr=0.63(p<0.01)であった。
【結論】本研究で新たに開発されたMHSRS は十分な内的信頼性を示し、回答者の精神健康状態とも正の関連性を示した。MHSRSは共分散構造モデルに検討の余地があるものの、メンタルヘルスサービスの質を評価するために有効であると考えられる。
【謝辞】本研究は、東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座とティーペック(株)の共同研究として実施された。