【共同研究成果発表】メンタルヘルス不調により休職した労働者を対象とした1か月間のEAPリワークプログラムの復職準備性および復職継続への効果

東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座と株式会社ジャパンEAPシステムズは、共同研究の成果である「メンタルヘルス不調により休職した労働者を対象とした1か月間のEAPリワークプログラムの復職準備性および復職継続への効果」に関する口演発表を、第31回日本産業ストレス学会(2023年12月8日(金)~ 9日(土);一橋大学一橋講堂;大会長 廣川 進、東川麻子)で行いました(抄録は以下)。


第31回日本産業ストレス学会抄録集から抜粋(産業ストレス研究 31巻 1号136頁)

[演題名]

メンタルヘルス不調により休職した労働者を対象とした1か月間のEAPリワークプログラムの復職準備性および復職継続への効果

[発表者、共同研究者氏名]

槇本英典 1)、榎本正己 1)、清野俊充 1)、吉田耕平 1)、安原京子 1)、櫻谷あすか2)、今村幸太郎2)、川上憲人2)

[所属機関名]

1)株式会社ジャパンEAPシステムズ

2)東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座

[抄録本文]

【目的】本研究ではジャパンEAPシステムズが提供するリワークプログラム(以下、JESリワーク)の利用者を対象に、プログラム前後で復職準備性が改善するかどうか、またプログラム終了時点の心理的要因とその後の復職継続との関連性を検討した。

【方法】2021年4月~2023年2月にJESリワークを利用した者および2023年3月31日までに復職した者を解析対象とした。JESリワークは生活リズムが安定した休職者を対象とした1カ月間全12回のプログラムで、再発防止策の検討やレジリエンスの向上を目的としている。復職準備性の評価にはJESが作成した復職準備性尺度に加えて、資質的・獲得的レジリエンス(BRSにより測定)、コミュニケーションスキル(ENDCOREsにより測定)、首尾一貫感覚(SOC3により測定)を使用した。復職予後の評価には復職後の転帰および復職継続日数を収集した。JESリワーク利用前後の各尺度得点差を対応のあるt検定で検討した。JESリワーク終了時の各尺度得点を中央値で2値化したログランク検定を実施した。

【結果】当該期間におけるJESリワーク利用者は155名であった。うち欠損値のない143名のデータを解析したところ、復職準備性の全ての尺度でJESリワーク前後で有意な改善がみられた(p<0.05)。2023年3月 31 日までに復職した者120名について復職後平均532.9日を観察しこの間に9名の再休職を確認した。首尾一貫感覚が高い群では低い群にくらべて復職継続日数が有意に長かった(P=0.02)。

【結論】1カ月間のEAPリワークプログラムにより利用者の復職準備性が向上していた。JESリワーク終了時の首尾一貫感覚は復職継続の指標となる可能性がある。

【謝辞】本研究は株式会社ジャパンEAPシステムズと東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座との共同研究として実施された。