【共同研究成果発表】若手従業員のレジリエンス向上を目的とした電話介入プログラムの効果:前後比較試験

東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座と株式会社セーフティネットは、共同研究の成果である「若手従業員のレジリエンス向上を目的とした電話介入プログラムの効果:前後比較試験」に関する発表を、第31回日本産業精神保健学会(2024年8月24日(土)~25日(日);産業医科大学ラマツィーニホール;大会長 𠮷村玲児)で行いました(抄録は以下)。

第31回日本産業精神保健学会抄録集から抜粋

[演題名]
若手従業員のレジリエンス向上を目的とした電話介入プログラムの効果:前後比較試験

[発表者、共同研究者氏名]
鷲野直恵 1)、百済剛 1)、岸田賢治 1)、新村達也 1)、飯田真子 2)、櫻谷あすか 3)、今村幸太郎 3)、川上憲人 3)

[所属機関名]
1) 株式会社セーフティネット 
2) 東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
3) 東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座

[抄録本文]
【目的】若手従業員のレジリエンス向上を目的とした電話介入プログラム「レジリエントワーカー®育成のためのアウトバウンドコール」のレジリエンスおよび精神健康への効果を前後比較試験で検証した。
【方法】単群前後比較試験デザインにより電話介入実施前後で結果指標の変化を検討した。金融系企業の入社1~3年目の従業員を対象にした。本プログラムは①電話介入実施前アンケート、②電話介入、③電話介入後のセルフケア情報提供、で構成され、対象者が悩みを話す体験を通して問題を整理し気づきを得ることを主な目的とし、心理職が実施マニュアルに従って1回30分の電話介入を行い、事前アンケートの結果に基づくコメントやレジリエンス向上の取り組みの助言を行った。電話介入後の情報提供では、セルフケアおよびレジリエンス向上のための情報提供を行った。効果評価指標には、レジリエンス(Tachikawa Resilience Scale)、心理的ストレス反応(職業性ストレス簡易調査票)、ウェルビーイング(日本語版WHO-5)を用いた。プログラム実施前後の各指標の得点について対応のあるt検定を実施し、介入の効果量としてCohen’s d を計算した。
【結果】2023年5~7月に研究参加者を募集し、148名が介入実施前調査(T1)に回答し、81名が電話介入実施から1か月後、T2調査に回答した(追跡率54.7%)。解析の結果、T2調査時点で参加者の不安感(心理的ストレス反応の下位尺度の1つ)が有意に改善し(d=-0.22,p=0.048)。回答者の8割程度がプログラムに満足、7割程度が心の健康を保つ役に立ったと回答した。
【結論】本プログラムは入社3年目までの従業員の不安症状の改善に有効である可能性がある。
【謝辞】本研究は株式会社セーフティネットと東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座との共同研究として実施された。
【倫理的配慮】本発表にあたっては、十分なインフォームド・コンセントを得て、プライバシーに関する守秘義務を遵守し、匿名性を保持して、個人が特定できないように十分配慮している。